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2020年に世界初のフォルダブルPCとしてリリースされた、ThinkPad X1 Fold 13。
本製品は市場から高い評価を獲得する一方で、13.3型というモニターの小ささや、USBポートの少なさ、さらに折りたたみ時に感じる分厚さなど、課題点も浮き彫りとなりました。この課題点を克服し、ユーザーによりよい使用感や感動を与えるために、ThinkPad X1 Fold 16の開発プロジェクトは開始されました。そのプロジェクトにおいてどのような挑戦が行われたのかを、エンジニアの視点から語っていただきました。

薄型化と目立たない折シワの両立を目指して

新たに発足したプロジェクトが作る新型フォルダブルPCの名前はThinkPad X1 Fold 16。開発チームは、アメリカのマーケティングや、台湾の開発部チームなどと連携しながら、前機種開発時に直面していた課題や、お客様や社内ユーザーから上がった問題の解決を模索していきました。
その上で目指された新しい形は、ビジネスでの活用をより強く意識し、モニターサイズを13.3型から16.3型へと大型化しつつも、全体の薄さも追求したもの。
目指す形は決まったものの、モニターの大型化と薄型化に取り組む中で、新たな課題も発生していきました。
PC全体の薄型化を目指す上でBell shape hingeという特殊な形状のヒンジを使用することになったのですが、これにより前機種の構造と比較してもモニターの折ジワは目立ちやすいものとなってしまいました。さらに、モニターにはOLED(有機EL)を採用したものの折りたたむ動作を繰り返すことでデラミネーション(層間剥離)が発生してしまうことも問題となりました。この2つの問題によって製品開発スケジュールに影響が生じましたが、それでもこれらは必ず解決しなければならないものであるため、解決のために何度も試行錯誤が重ねられました。

プロジェクトに携わったのは、横浜の大和研究所に加え、アメリカ・中国・台湾など各国のチーム。本来であれば、それぞれの拠点を訪問し合い、試作品を手に取り、顔を合わせながら議論を重ねていくのが最も効率の良いプロジェクトの推進方法です。しかし、開発に取り組んでいた期間は世界的に感染症が流行しており、ミーティングの機会も必然的にオンラインのみとなってしまいました。
こうした中で、コミュニケーションのギャップが生じてしまったことも、問題の長期化につながっていきました。それでも各国のスタッフはそれぞれに言葉を尽くし、オンライン会議であっても製造ラインの画像や設計中の製品の姿をライブカメラに映しながら、オンラインミーティングで生じる距離の壁を埋める努力をしていきました。

地道な試行錯誤の末に導き出した解決策

長期化した折ジワとOLEDのデラミネーションの問題。それでも多くの人材がアイデアを出し合い、幾度もの試行錯誤を重ねた末に解決方法が導き出されていきました。
折ジワの問題解決の鍵となったのは、設計チームと製造チームの協業でした。折ジワができる大きな原因は、OLEDが製造時の部品公差の累積や輸送時の衝撃で筐体からずれてしまうことにありました。そこで、薄型のOLEDを筐体に組み付ける際に、OLEDを引っ張りながら組み付けることで製造時のシワを抑えるコンセプトが考案され、そのための組み立て装置が開発されました。
さらに、輸送時の衝撃やユーザーの繰り返す折りたたみ動作の負荷によって、OLEDが0.xxmm単位でずれることを防ぐために、ヒンジ部分にずれ防止のCAM構造を追加。この対策は功を奏し、折ジワの問題は大きく改善。さらにこのCAM構造は特許を取得するに至りました。

もう一つの大きな問題であった、OLEDのデラミネーションに関しては、16インチサイズのフォルダブルディスプレイの採用は業界初のことであったため知見も少なく、問題がディスプレイにあるのか、ヒンジ側にあるのかといった原因追及にも時間がかかりました。
それでもエンジニアたちは、積極的に解析を行い続け、時にレノボグループであるモトローラのフォルダブルグフォンの先行研究を担当しているリサーチ部門からのサポートを受けながら、一つ一つ考えられる要因を潰す地道作業を続けました。
その結果、OLEDを構成する各層の材質と厚みに原因があることを突き止め、サプライヤーと共に適切な素材と厚みを追求することでついに、解決策を導くことができました。
こうして完成したThinkPad X1 Fold 16は、フォルダブルディスプレイの新しい価値を示す製品となりました。この成功をもとに、さらなるフォルダブルディスプレイの可能性を探る取り組みはこれからも続いていきます。

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