Think Pad X1 Carbon 7th 開発ストーリー
Development ManagerC.T. [2007入社]
一年に一度のペースでリリースされ続けているThinkPad X1 Carbonシリーズは、NEC Lenovoグループの製品の中でもフラグシップモデルとなる製品。
この製品に組み込まれた最新の技術は、以降リリースされる製品にも生かされるという技術の試金石の役割を果たすモデルでもあります。
その7世代目となるThink Pad X1 Carbon 7thの開発プロジェクトで求められたのは、さらなる薄型軽量化とロングバッテリーライフ、さらには近年急速に進む働き方改革への対応やセキュリティ強化。時流を捉え、ビジネスを円滑に進めるための製品づくりを目指して、日本・アメリカ・中国に渡るワールドワイドなチームが招集されました。大和研究所のC.T.さんは、このプロジェクトにおいて日本の開発チームの運営に携わっています。
ワールドワイドなプロジェクトが生み出すフラグシップモデル
Think Pad X1 Carbon 7thがリリースされたのは2019年6月。プロジェクトが開始されたのはその2年ほど前に遡ります。当時から「働き方改革」は大きく取り沙汰されており、市場を知るスタッフからもビジネスを円滑に、かつリモートワークにも対応するような製品開発の声が上がっていました。
こうした背景に加え、PCは世代を経るごとに薄型・軽量・長時間稼働、さらにはデザインの洗練という製品の魅力向上が求められていきます。
過去の製品のブラッシュアップと時流を捉えた製品の機能追加。この二つの側面の進化を求めてプロジェクトは発足しました。
軽量化の面で考慮されたのが各部品の見直し。これは過去の開発の中で繰り返し、より軽くより強い部品を求めて積み重ねられてきた開発哲学です。今回私たちが特に着目したのはキーボード。これまでの製品は打鍵した際のキーの沈み込みが1.8mmほどだったのですが、これを1.5mmほどにまで変更。打鍵の際の押し心地を維持しつつ極限までの薄さを追求することで、軽量化を図っています。これ以外にも、マザーボードやカバーなどあらゆる箇所の見直しを図りました。
バッテリーライフの向上の課題解決において私たちが検討したのは、バッテリー容量を大型化するか、省電力化によって稼働時間を伸ばすのかという問題でした。議論を重ねた上で私たちが選択したのは、低温ポリシリコンを使用した液晶画面のバックライトの技術の導入。昨今のPCは液晶の消費電力が高いため、これを削減することで省エネ化を目指しました。しかし新しい技術、新しい部品を導入するためにはコストがかかります。本プロジェクトは、全体の統括やマーケティングはアメリカが、部品などの購入は中国のチームが担当しています。私たちは、こうした海外のチームに向けて、ビジネス用途で丸一日PCを稼働させるというテーマから、ディスプレイ・バッテリー双方のケースを想定したコスト予測をして資料化しました。
液晶にコストをかけることで、バッテリーにコストをかけるケース以上の効果が発揮できることを証明するためのプレゼンテーションを実施することで、開発のための方向性を確定させていきました。
「働き方改革」に対応する製品を生み出せ!
こうした過去の製品からの機能向上と同時に進行していた「働き方改革」への対応。定義のやや曖昧なこのオーダーに対して私たちが導き出したのは、セキュリティ対策とオフィス外での働き方に対応する大型スピーカーと高性能マイクの実装でした。
そのうちセキュリティ面に関してはThinkPad Privacy Guardに対応するパネルを採用。
サプライヤーと連携した上で、ThinkPad X1 Carbon 7thに合わせた独自の設計を実施。ボタンひとつで作業モードと覗き見を防止するプライバシーモードを切り替えられるようにしています。
さらに、大型スピーカーと高性能マイクの導入においては、オフィス外での会議の利便性を追求。シェアオフィスやレンタルの会議室においても特別な設備を用いることなく、ノートPC一台で十分に快適な会議が行える性能獲得を目指し、過去製品の2マイク2スピーカーの構成から4マイク4スピーカーへの変更を目指しました。
しかしこのマイク・スピーカーの設置において問題が発生。通常、スピーカーが置かれるのはPC本体の中のマザーボードと筐体の隙間なのですが、本プロジェクトではこの箇所に、ワイヤレスアンテナの設置が想定されていました。幸いなことに、私たちスピーカーを手がける部署とアンテナを手がける部署はどちらも横浜の研究所内に揃っており、日頃からともに製品の設計・評価を行っていました。そこで発生した問題を共有し、最適なスピーカー・アンテナの位置選定を調整することでこの課題をクリア。また4箇所のマイクについても、どこに配置するかが大きな課題となりました。例えば、設置場所がキーボードに近ければ打鍵の音を拾ってしまいますし、液晶画面の背面カバーの上などでは十分に音を拾えません。数十回による調整・試行錯誤の結果、PCの液晶画面の縁に4つのマイクを設置することが決定。十分な集音とコルタナをはじめとした音声認識機能付きのアシスタント機能での認識率を検証した上で実装に至りました。
プロジェクトは無事成功を収め、2019年6月にThinkPad X1 Carbon 7thはリリースされました。苦労したオーディオ面での機能向上は、マーケットでも大きな反響を獲得し、次世代でも継続した進化も期待されます。
このプロジェクトにおいて私が実感したのは、NEC Lenovoグループにおけるワールドワイドチームのチームワーク。全てのスタッフが仕事に対してオーナーシップを持ち、積極的に分野を超えた連携を当たり前のように行いました。
例えば、マイクの設計1つとっても、外観・集音性能・コストのベストバランスを、マーケティング、意匠設計、開発、品質担当が一丸となって取り組むのです。この結束はさらに薄型・軽量化、およびユーザーがPC作業に没入できる狭額縁化が求められる次世代のThinkPad X1 Carbonにおいても大きな成果を導き出してくれることでしょう。