

ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Edition 開発ストーリー
Power and Performance Management Lead EngineerA.N. [2016入社]
Electrical Design / Development Project LeaderM.T. [2015年入社]
Audio EngineerE.N. [2022年入社]
NEC Lenovoを代表する製品であるThinkPad。本シリーズは誕生から30年以上の長きにわたり、時流に合わせた進化を求めつつも、一貫して「お客様の生産性を向上させるためのツール」という哲学をもって生み出されています。2024年にリリースされたThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Editionも、その哲学を受け継ぎつつ、リモートワークの一般化やAI普及といったユーザーの使用環境に応じて、進化を遂げた機種となります。その開発の裏にあった性能・品質向上のための取り組みを紹介していきます。
3つの観点から目指すThinkPad X1 Carbonの
新たな可能性
ユーザーのPC使用環境が大きく変化する近年の時流を捉えるため、ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Editionのプロジェクトは発足しました。コンセプトは、薄型軽量であり、かつ低消費電力と操作性を両立したもの、さらにユーザーからの要望が高いAIを活用したスマートフォンとの連携機能の追加というもの。それぞれのコンセプトをクリアするために、各分野のエンジニアがアイデアを出し合い、設計開発に挑みました。
ひとつ目の薄型軽量化の面での目標は、ThinkPad X1 Carbon初となる、1kgを下回る重量の実現。これは、日本をはじめとしたアジア圏のお客様から特に多く挙げられている要望でもありました。従来の品質や耐久性を保ちつつ薄型軽量化を実現するための施策として、筐体カバーやマザーボードの新規開発、接合構造、ファンやCPUのレイアウトに至るまで、細部にまでこだわり抜いた設計の見直しが提案されました。
その結果、配線設計の難易度は格段に上がり、カバーの薄型化や軽量素材の採用による剛性低下、ヒンジ周辺の接合不足、強度不足などが障害としてプロジェクトに立ち塞がりました。難易度の高い問題であったものの技術者たちは検討を重ね、カーボン繊維の配向の調整や強度の最適化と、ヒンジとカバーの形状改良で衝撃分散化する技術を追求。その結果、従来の品質・剛性を保ちながら、980g台という軽量化に成功しています。

ふたつ目は、低消費電力と操作性の両立。ノートPCにおいて消費電力を下げることは、バッテリーライフの長時間化や表面温度の低減、ファンの騒音低減につながるため、追求し続けるべき課題です。ThinkPadシリーズでも、消費電力の削減に長年取り組んできていましたが、常に効果があるとは言い難い状況が続いていました。そこでThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Editionでは、PCにおける操作性を監視する方法を考案。操作性を維持しながら消費電力を最大限抑えるというものでした。ここで、具体的に何の操作性を監視するか、という問題が生じました。例えばアプリケーションの起動時間を監視する場合、アプリケーションごとに起動時間が異なるため、この起動時間であれば良いという普遍的な目標値を定めることが出来ません。様々な監視対象を検討する中で、チームはやがて「アプリケーションによらない普遍的な操作性を監視すれば良いのではないか」という発想に行きつきました。その普遍的な操作性とは、キーやマウスによる入力が画面に出力されるまでの時間。
人間が表示を遅いと感じない入出力時間を目標に定め、電力を強制的に下げる方法を採用することで、効率的な消費電力削減を可能としました。
みっつ目となるAIを活用したスマートフォンとの連携機能として実装されたのが、Smart Share。これはスマートフォンとPCとの間で簡単に画像ファイルを転送できるもので、自社のスマートフォンブランドであるMotorola製品だけでなく、他社のスマートフォンであっても、PC上とスマホ上のAIセンサーによって通信しようとしているスマホを認識し、スムーズなデータの転送を可能としています。このSmart Shareは、業界内でこれまでにはない機能であったため、プロジェクトチームは、評価・検証やガイドラインの基準を、ゼロから突き詰めユーザ目線から感じる使い心地の良さや、機能性の獲得に努めています。開発にあたって、異なるチームの技術的要件を徹底的にヒアリングして議論しガイドラインを定めるとともに、想定される様々なテストケースの作成、挙動の確認、UXデザインの検討を経て機能実装に成功。直感的な操作でスマートフォンと画像を転送できるその使い心地は、プレスやユーザーからも高い評価を獲得することに成功しました。
多くのエンジニアの努力の結晶
数多くのエンジニアたちの努力が実り、プロジェクトは成功を収め、2024 年 11 月に ThinkPad X1 Carbon Gen 13 Aura Edition は無事リリースされました。
当初に想定したコンセプト通り、本機種はThinkPad としての堅牢性と高い品質を保ちながらも 980g台 というThinkPad X1 Carbon最軽量のスペックと、低消費電力と操作性、生産性を大きく向上させるデータ転送を実現しました。

ThinkPad X1 Carbon 13 Aura Editionは、リリース後すぐにマーケットから高い評価を獲得しています。
このプロジェクトを成功に導いたのは、エンジニアたちの執念にも似た技術の追求姿勢と、NEC Lenovo グループのワールドワイドのチームワークが生んだ、解決力。
マーケティングにはじまり、デザイン、開発、 品質保証など多くのチームが関わり議論を重ねたことで、性能とコストのバランスを取った設計・開発・製造が行えたのです。 本プロジェクトで培われたチームワークと新たな技術やアイデアは、次なる ThinkPadシリーズを、さらに高みへと進化させるための大きな礎となることでしょう。